試算表を見て会計事務所に聞くべきこと

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試算表を見て会計事務所に聞くべきこと

試算表で何がわかるのか?
会計事務所が本当に教えたい「数字の読み方」

毎月届くのに「なんとなく眺めるだけ」になっていませんか。試算表は、使い方次第で経営の羅針盤になります。

「試算表って、税金の計算に使うだけじゃないの?」
中小企業の経営者からよく聞く言葉です。毎月届いているのに、実際に経営の意思決定に使っている方はほとんどいません。

この記事では、試算表を見るだけで経営者が気づけることを、具体的な数字を使って解説します。決算書を待たずに、今月から動けるようになることが目標です。

【この記事でわかること】

  • 試算表とは何か(決算書との違い)
  • 試算表の3つの重要な数字とその見方
  • 「利益が出ているのにお金がない」謎を解く方法
  • 毎月5分でできる試算表チェックの習慣
  • 会計士に聞くべき具体的な質問リスト

1. 試算表とは何か――決算書と何が違う?

試算表(正式名称:合計残高試算表)は、ある時点での会社の帳簿を集計した中間レポートです。決算書(貸借対照表・損益計算書)は年に1回ですが、試算表は毎月作成されます。

試算表 決算書
作成頻度 毎月 年1回
確定度 暫定(速報値) 確定(税務申告ベース)
主な用途 経営判断・月次管理 税務申告・金融機関提出
わかること 今月・今期の損益と資産状況 1年間の最終結果

つまり試算表は、「今期、会社がどこに向かっているか」をリアルタイムで教えてくれる速報値です。決算が終わってから動くのでは遅い。試算表を使って、期中に手を打てるかどうかが経営の差になります。

2. 試算表の構成――3分で全体像をつかむ

試算表は大きく分けて「損益の部」と「資産・負債の部」の2つで構成されています。

① 損益の部(儲かっているかどうか)

項目 意味 見るべきポイント
売上高 今期の合計売上 前年同期比・月別の増減
売上原価 商品・材料・外注費 売上に対する比率(原価率)
粗利(売上総利益) 売上-原価 ここがビジネスモデルの実力値
販管費 人件費・家賃・広告費など 固定費の塊。削れる余地はあるか
営業利益 粗利-販管費 本業で稼げているかの最重要指標

② 資産・負債の部(お金の状態)

項目 意味 見るべきポイント
現預金 今ある現金・預金の合計 月商の何ヶ月分あるか
売掛金 まだ入金されていない売上 残高が膨らんでいないか
借入金 金融機関への返済残高 返済額と利益のバランス

3. 「利益が出ているのにお金がない」を解く

中小企業の経営者が最も困惑するのが、試算表では黒字なのに、口座のお金が減っているという現象です。これは矛盾ではありません。理由は主に3つあります。

理由① 売掛金が膨らんでいる
試算表の売上には、まだ入金されていない売上(売掛金)も含まれます。例えば3月末に1,000万円の売上を計上しても、入金が4月であれば、3月時点では利益が出ているのに手元現金は増えません。

チェック方法:売掛金の残高を前月と比較し、増えていれば「利益はあるが現金は来ていない」状態です。
理由② 借入金の返済は「費用」にならない
毎月50万円の借入返済をしていても、試算表の損益には利息分しか費用として反映されません。元本の返済は「資産・負債の動き」なので、損益計算には出てこないのです。

計算式:税引後利益+減価償却費 = キャッシュフローの目安。これが返済額より多ければOK。
理由③ 在庫・設備投資がお金を使っている
商品在庫を積み増したり、機械設備を購入したりすると、その分だけ現金が出ていきます。しかし設備は「資産」になるため、購入時に全額費用になるわけではありません(減価償却で数年にわたり費用化)。
💡 会計士への質問テンプレート
  • 「今月の営業利益と、実際の現金の増減の差はどこで生まれていますか?」
  • 「売掛金の回収サイトは正常範囲ですか?」
  • 「返済を含めた実質的なキャッシュフローはプラスですか?」

4. 試算表から読み取れる「経営の危険信号」5つ

次のいずれかに当てはまる場合は、早めに会計士と対策を相談してください。

1
粗利率が前年より3ポイント以上下がっている 原価の高騰か、値引き販売の常態化が起きています。放置すると固定費を賄えなくなります。
2
売掛金が月商の2ヶ月分を超えている 回収遅延や不良債権が混在している可能性があります。得意先別に内訳を確認しましょう。
3
現預金が月商の1ヶ月分を下回ってきた 資金ショートの予兆です。融資の検討や経費の圧縮を急ぐ必要があります。
4
人件費比率が売上の35%を超えている(製造業・小売業) 業種によって適正水準は異なりますが、上昇傾向ならば生産性の見直しが必要です。
5
営業利益がマイナス(営業損失)が2ヶ月続いている 本業が赤字です。補助金や一時的な収入で隠れていないか確認し、根本の収益構造を見直す必要があります。

5. 経営者が毎月5分でできる試算表チェックリスト

複雑な分析は会計士に任せて構いません。経営者は以下の5点を毎月確認する習慣を持つだけで、会計事務所との会話の質が劇的に変わります。

確認項目 チェック内容 目安
✅ 売上高 前年同月比・今期累計の進捗 計画比±10%以内か
✅ 粗利率 売上総利益 ÷ 売上高 前年同期から変動していないか
✅ 営業利益 プラスかマイナスか、金額感 年間計画の月割りに対して順調か
✅ 現預金 残高の絶対額 月商の1.5〜3ヶ月分を維持しているか
✅ 売掛金 前月からの増減 急増していたら回収状況を確認
📌 試算表を活用するための一工夫
  • 会計士から届いたら、その日のうちに上記5項目だけメモする
  • 「先月と比べて気になること」を1つだけ書き留め、次回の面談で質問する
  • 年間の数字を月別グラフにしてもらうと傾向が一目でわかる

6. 会計事務所をもっとうまく活用するために

試算表を受け取ったとき、多くの経営者は「確認しました」と返事をするだけです。しかし会計士は、聞かれれば必ず答えられる情報を大量に持っています。下記の質問を持って面談に臨むだけで、毎月の打ち合わせが格段に価値あるものになります。

Q. 「今の状況で、決算前にできる節税対策はありますか?」
試算表で今期の利益が見えてきた段階(期末の2〜3ヶ月前)で必ず聞いてください。設備投資・役員報酬の調整・小規模企業共済など、期中にしか間に合わない対策があります。決算後では手遅れになるものも多い。
Q. 「同業他社と比べて、うちの数字はどうですか?」
会計士は多くのクライアントの数字を見ています。業種別の平均粗利率・人件費比率などを知っています。自社の立ち位置を確認することで、改善の優先順位が明確になります。
Q. 「来年に向けて、資金繰りで注意しておくべき時期はいつですか?」
法人税・消費税の納付タイミング、賞与支払い月など、現金が出ていく時期は予測できます。事前に把握しておくことで、融資の準備や経費の平準化が可能になります。

まとめ――試算表は「使う」ためにある

  • 試算表は毎月届く「経営の速報値」。決算を待たずに動くためのツール
  • 見るべき数字は「粗利率・営業利益・現預金・売掛金」の4つに絞る
  • 「黒字なのにお金がない」は正常な会計の現象。売掛金と借入返済を確認する
  • 危険信号(粗利率の低下・現預金の減少)は2ヶ月連続で確認したら即相談
  • 会計士に「聞く質問」を1つ持っていくだけで、打ち合わせの価値が変わる

試算表は、使い方を知れば経営者にとって最も身近な「経営診断書」になります。毎月届いているのに眺めるだけで終わっている方は、今月から上記5項目だけチェックするところから始めてみてください。

数字の意味がわかると、経営の会話が変わります。それが、会計事務所と経営者の本来の関係です。


この記事について この記事の内容は一般的な会計・税務の解説であり、個別の税務アドバイスではありません。具体的な対策については、担当の税理士・会計士にご相談ください。

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