税理士事務所の「顧問料」はお守り代だった。
会計事務所20年のベテランが明かす、
この業界の不健全な構造
毎月、何となく払い続けている顧問料。「税理士に頼まないと不安だから」——その感覚こそが、業界が何十年も守り続けてきた「お守りビジネス」の正体だ。
「何もしてないのに毎月お金が消えていく」
会計事務所に20年いた。顧客の中小企業のオーナーたちが、毎月黙って振り込んでいく顧問料。 一体、何の対価として払っているのか——実は、担当者の多くもうまく説明できないのが現実だ。
業界内の隠語として「お守り料」という言葉がある。税理士に頼んでいれば「何かあっても大丈夫」という 不安感に課金するビジネスモデルだ。 明確な成果物がなく、何もトラブルがなければ「税理士のおかげ」、何か起きれば「もっと相談すれば良かった」という構図。これ、ビジネスとしてよくできすぎている。
月5万円の顧問料のうち、実際に人が動いた作業の原価は多くの場合、月1〜2万円程度だ。残りはシステム維持費、事務所の家賃、そして「いつでも相談できますよ」という待機料金。クライアントの多くはその待機料を使いこなせていない。
会計ソフトが変えた、この10年
freee、マネーフォワード、弥生クラウド——これらが普及した今、「記帳代行」という作業の価値は激変した。 AIが領収書を読み取り、銀行明細が自動で同期され、消費税の計算も自動でされる時代に、 「毎月ご訪問してチェックします」の価値がどれほどあるか、冷静に考えてほしい。
具体的に、いくら節約できるか
では実際に、「顧問契約をやめてスポット契約に切り替えた場合」の費用差を見てみよう。 これは私が実際に見てきたケースをベースにした試算だ。
| 項目 | 従来の顧問契約 | 新しいモデル(推奨) |
|---|---|---|
| 月次顧問料 | ¥30,000〜¥80,000/月 | 不要(¥0) |
| 会計ソフト初期設定・指導 | 顧問料に含まれる(なんとなく) | ¥50,000〜¥100,000(1回) |
| 運用サポート(3〜6ヶ月) | 月次訪問として請求 | ¥30,000〜¥50,000(期間固定) |
| 決算・法人税申告 | 別途 ¥150,000〜¥300,000 | ¥150,000〜¥300,000(変わらず) |
| 税務相談(都度) | 顧問料内(使いこなせない) | ¥10,000〜¥30,000/回 |
| 年間合計(試算) | 約 ¥660,000〜¥1,260,000 | 約 ¥230,000〜¥450,000 |
「税理士に頼んでいれば安心」から
「使う時だけ専門家を使う」へ。
その発想の転換だけで、年間で数十万円が手元に残る。
じゃあ、何をすればいいか?
- まず今の顧問契約書を引っ張り出して「何をしてもらっているか」を箇条書きにする
- freee・マネーフォワードいずれかのクラウド会計を自分で触ってみる(無料期間あり)
- 「初期設定と半年サポート、あとは決算のみ」でいくらか税理士に見積もりを取る
- 複数の税理士・会計士に相談し、スポット対応可能かを確認する
- 自社で対応できない範囲(税務調査対応・M&A・相続)だけを専門家に委託する
業界の人間として、最後に一言
誤解しないでほしいのは、「税理士は不要だ」と言いたいわけではない。 税務調査の場面、資金調達の局面、相続や事業承継——そこで専門家の力は本物だし、 頼りになる税理士との関係は財産だ。
ただ、「毎月何となく払い続ける定額の安心料」は、もう見直していい時代になった。 クラウド会計が成熟し、AIが記帳を自動化した今、お守り代を払い続ける合理的な理由は薄れている。
20年この業界にいて、気づいたことがある。本当に良い仕事をしている税理士ほど、 「うちに毎月お金を払わなくていいですよ。これだけ自分でできますよ」と言う。 逆に、解約をひどく嫌がる事務所は——何かを守っているのかもしれない。

コメント