会計事務所職員の新人が経営者に会った時に聞くべき20の質問集

会計事務所職員の新人が経営者に会った時に聞くべき20の質問集 会計事務所職員
会計事務所職員の新人が経営者に会った時に聞くべき20の質問集
📋 For 会計事務所 新人スタッフ

初めて担当クライアントの経営者と面談する日が来た。
「何を聞けばいいんだろう…」「変な質問して信頼を失ったら…」

そんな不安、もう終わりにしましょう。

この記事では、ベテラン税理士が最初のヒアリングで必ず押さえる20の質問を、「なぜ聞くのか」「どう活かすか」まで含めてまとめました。
プリントアウトして面談に持っていける構成です。

経営者との最初の面談は、税務・会計の話をするだけの場ではありません。 経営者の頭の中にある「不安・夢・課題」を引き出し、顧問としての信頼を築く最初のチャンスです。この20問を使いこなせれば、先輩からの評価も、顧客満足度も、確実に変わります。

🗺️ 20問の全体マップ:何を・なぜ聞くのか

ヒアリングの6ゾーン
🏢
事業の
基本情報
Q1〜3
💰
お金の
流れ
Q4〜7
👨‍👩‍👧
人・組織
の状況
Q8〜10
⚠️
リスク・
悩み
Q11〜14
🚀
将来の
ビジョン
Q15〜17
🤝
顧問への
期待
Q18〜20
🧠 質問する前に知っておくべき3つの心構え
  • 「尋問」ではなく「対話」——質問は一方的に投げるのではなく、経営者が話したくなる空気を作ることが目的。相槌と復唱を忘れずに。
  • 「答え」より「背景」を聞く——数字の背後にある意思決定や感情を引き出せると、本当の課題が見えてくる。
  • 全部聞こうとしない——初回は20問中10問でOK。大切なのは網羅ではなく、経営者に「この人は違う」と感じてもらうこと。
🏢 Zone 1 事業の基本情報
01
「御社の主力商品・サービスを、一番わかりやすい言葉で教えていただけますか?」
📌 なぜ聞く? → 事業理解の出発点
この質問の意図
決算書・申告書だけでは見えない「何で稼いでいるか」の実態を把握する。経営者自身の説明から、何を誇りにしているか・何に自信があるかも読み取れる。
💡「なるほど、それは〇〇業界の中でも珍しいアプローチですね」と一言添えると、経営者の話が弾みやすい。
02
「今のお客様(顧客層)はどんな方が多いですか?BtoBですか、BtoCですか?」
📌 なぜ聞く? → 売上・消費税・与信リスクの構造が変わる
この質問の意図
BtoBなら売掛金・請求書管理・インボイス対応が重要。BtoCなら現金売上の管理方法や消費税の申告方法が変わる。顧客構造を知ることで税務上の論点が一気に見えてくる。
💡「上位3社で売上の何割くらいを占めますか?」と続けると、売上集中リスクの把握にもなる。
03
「この事業を始められたきっかけや、一番大変だった時期を教えていただけますか?」
📌 なぜ聞く? → 経営者の価値観・執着ポイントをつかむ
この質問の意図
数字では見えない「なぜこの事業をやっているか」が聞ける黄金質問。経営者が大切にしていることがわかると、提案のトーンや優先順位が定まる。感情的なつながりも生まれやすい。
💡経営者が語り始めたら、遮らずに最後まで聞く。途中でメモを取りながら「そこ、もう少し聞かせてください」と深堀りするのが理想。
💰 Zone 2 お金の流れ
04
「売上の入金サイクルはどうなっていますか?(月末締め翌月払いなど)」
📌 なぜ聞く? → 資金繰りの実態把握
この質問の意図
黒字でも資金繰りで倒産する「黒字倒産」は中小企業の現実。入金と支払いのタイムラグを把握することで、キャッシュフロー改善提案や融資タイミングのアドバイスにつながる。
💡「一番資金が苦しくなる時期(月・季節)はいつですか?」とセットで聞くと、資金繰り表の必要性を自然に提案できる。
05
「現在、借入(融資)はありますか?もしあれば、返済条件のざっくりした感じを教えていただけますか?」
📌 なぜ聞く? → 財務戦略の基礎情報
この質問の意図
借入の有無・残高・金利・返済期間は、節税提案の前提条件。過剰借入があれば返済優先、余裕があれば設備投資・節税の余地がある。決算書にある数字を「なぜその水準か」と紐づけるための確認。
「いくら借りてますか?」と直接聞くのはNG。「ざっくりした感じで」「よろしければ」と柔らかく聞くのがコツ。
06
「経費の中で、毎月固定でかかっているものと、変動するものを大まかに教えてもらえますか?」
📌 なぜ聞く? → 損益分岐点と固定費構造の把握
この質問の意図
固定費が高い企業は売上が下がった時のリスクが大きい。変動費型か固定費型かで、経営の安全性・利益の出やすさが大きく変わる。このヒアリングから「固定費削減」「売上水準の最低ライン」といった提案が生まれる。
💡「月の売上がゼロになっても耐えられる期間は、感覚的にどのくらいでしょうか?」と続けると、経営者自身がリスク認識を深めるきっかけになる。
07
「今、会計や経費管理にどんなツールや方法を使っていますか?(エクセル・会計ソフトなど)」
📌 なぜ聞く? → 業務フローと効率化の余地を知る
この質問の意図
紙・エクセル管理ならクラウド会計への移行提案ができる。既に会計ソフトを使っているならバージョン・設定の確認へ。この一問で、事務所としての関与範囲と提案機会が一気に見えてくる。
💡「入力作業は社内でやっていますか、それとも奥様や外注に頼んでいますか?」と続けると、記帳代行ニーズの有無がわかる。
👨‍👩‍👧 Zone 3 人・組織の状況
08
「今、スタッフは何名いらっしゃいますか?正社員・パート・業務委託の内訳はどんな感じですか?」
📌 なぜ聞く? → 給与計算・社保・労務リスクの把握
この質問の意図
人員構成で、給与計算の複雑さ・社会保険の加入義務・業務委託の偽装請負リスクなどが変わる。特に「業務委託」が多い場合は、労働局調査リスクや消費税の仕入税額控除の観点からも確認が必要。
💡給与計算を自社でやっているか、社労士に依頼しているかも聞いておくと、事務所のサービス提案範囲が決まる。
09
「社長ご自身の役員報酬は、どのような基準で決めていらっしゃいますか?」
📌 なぜ聞く? → 節税・社保の最大論点のひとつ
この質問の意図
役員報酬は、法人税・所得税・社会保険料の三重構造で最適化を考える必要がある。「なんとなく生活費分だけ取っている」という経営者が多く、適正水準の検討は大きな節税提案につながる。
「低すぎますよ」「高すぎますよ」と即断しない。まず「なぜその金額に?」と背景を聞いてから判断を共有する。
10
「経理担当の方はいますか?帳簿への関与度合いはどのくらいですか?」
📌 なぜ聞く? → 事務所の関与スタイルを決める
この質問の意図
社内経理がしっかりしている場合と、社長一人でどんぶり勘定の場合では、関与の深さが根本から変わる。また、経理担当者がいる場合はその方との関係構築も顧問成功の鍵になる。
💡「今後、経理業務を効率化したいとお考えですか?」と続けると、クラウド化・記帳代行の提案につながる。
⚠️ Zone 4 リスク・悩み
11
「今、経営面で一番頭を悩ませていることは何ですか?」
📌 なぜ聞く? → 顧問としての存在価値を決める最重要質問
この質問の意図
これが言えた経営者は、税理士を「申告書を作る人」ではなく「経営のパートナー」として見てくれる可能性が高い。ここで出た悩みが、今後の提案の核心になる。絶対に聞き逃してはいけない。
💡「今だけでなく、3年後に向けての不安もあれば教えてください」と続けると、将来の課題まで一気にヒアリングできる。
12
「税務調査を受けたご経験はありますか?もしあれば、どんな内容でしたか?」
📌 なぜ聞く? → 過去のリスクと経営者の税務感覚を知る
この質問の意図
調査経験がある経営者は、どんな指摘を受けたかで「弱点」がわかる。経験がない場合も、「どんな準備が必要ですか?」という不安が潜んでいることが多く、税務調査対策の提案につながる。
💡「当事務所では〇〇のような形で調査前の準備をサポートしています」と一言添えると、安心感の提供になる。
13
「売上・利益について、前期と比べてどんな変化がありましたか?その要因はどう見ていますか?」
📌 なぜ聞く? → 経営者の数字リテラシーと課題認識を測る
この質問の意図
「増えた」「減った」の背景を経営者自身がどう分析しているかがわかる。数字を把握していない場合は「月次試算表」の活用提案へ。自分なりの分析がある場合はその精度を高める提案へとつながる。
数字の正誤をすぐ指摘しない。まず経営者の言葉を受け止めてから、「その点については資料を確認させてください」と進める。
14
「今、保険・共済(経営者保険・小規模企業共済など)には加入していますか?」
📌 なぜ聞く? → 節税・リスクヘッジの状況確認
この質問の意図
小規模企業共済・経営セーフティ共済・iDeCoなどは中小企業経営者にとって有力な節税手段。未加入なら提案につながる。加入済みなら証券内容の確認と最適化アドバイスの機会になる。
💡「加入済みです」と言われたら「証券を一度拝見できますか?内容が合っているか確認します」と一言。これだけで顧問としての価値が出る。
🚀 Zone 5 将来のビジョン
15
「3〜5年後、この会社をどんな状態にしたいですか?」
📌 なぜ聞く? → 中長期の提案軸を作る
この質問の意図
「上場したい」「子どもに継がせたい」「5年後に売りたい」など、ゴールによって税務・財務戦略は180度変わる。この一問で「申告書屋」から「経営パートナー」への転換が起きる。
💡答えが漠然としていても責めない。「もし理想が叶うとしたら?」と仮定形で聞き直すと言語化しやすくなる。
16
「事業承継・後継者については、何か考えていらっしゃいますか?」
📌 なぜ聞く? → 長期的な関与の最大案件
この質問の意図
事業承継は、税務上・法務上・感情的に最も複雑な案件のひとつ。「まだ早い」と思っている経営者でも、50代以降は早めに話を始めることが重要。この質問で種を蒔くだけでも大きな意味がある。
💡相手が60代以上なら積極的に掘り下げる。「誰に継いでもらいたいか、イメージはありますか?」と続けると本音が出やすい。
17
「今後、新規事業や設備投資・M&Aなど、大きな動きを考えていますか?」
📌 なぜ聞く? → 特殊な税務・財務ニーズの先読み
この質問の意図
設備投資なら特別償却・税額控除。M&Aなら株価算定・組織再編税制。新規事業なら消費税区分・法人分割の検討。「これから何かやる」という情報は、税務・財務の両面で早期関与につながる金脈。
💡「ご検討の段階でぜひご相談ください。動く前に税務的な観点からお伝えできることがあります」と一言添えるだけで信頼度が上がる。
🤝 Zone 6 顧問への期待
18
「前の税理士(顧問)に、不満に感じていたことや物足りなかったことはありますか?」
📌 なぜ聞く? → 差別化ポイントを直接教えてもらう
この質問の意図
「連絡が遅い」「申告書を持ってくるだけ」「何も提案してくれない」——こうした不満が聞けると、自分たちが何をすれば評価されるかがダイレクトにわかる。事務所の強みと顧客の期待のマッチングに使える。
前の税理士を一緒になって批判しない。「そうでしたか、その点はしっかり対応できます」と前向きに返すのがプロの対応。
19
「私たちに一番期待していることは何ですか?(節税・資金調達・経営相談・スピード感など)」
📌 なぜ聞く? → 優先順位を経営者自身に語ってもらう
この質問の意図
「節税してほしい」「銀行との交渉を手伝ってほしい」「月に一度話を聞いてほしい」——期待値が明確になると、関与の内容・頻度・報酬の設計が全部変わる。この質問なしに顧問契約を始めるのは地雷を踏みにいくようなもの。
💡「今の段階で、一番急ぎで解決したいことはどれですか?」と順位をつけてもらうとさらに明確になる。
20
「私への連絡のしやすさ・頻度について、ご希望はありますか?(メール・電話・チャットなど)」
📌 なぜ聞く? → 関係の質を最初から設計する
この質問の意図
コミュニケーション不足は顧問解約の最大要因のひとつ。「電話より LINE が楽」「月一でいいので訪問してほしい」など、連絡手段の好みを最初に合わせておくだけで、満足度が劇的に変わる。
💡「何かあったときに気軽に連絡してください、と言いたいのですが、どの手段が一番便利ですか?」という聞き方が自然でおすすめ。
⚠️ 新人がやりがちなNG行動

・質問だけして、メモを見返さない(その場で整理しないと記憶は飛ぶ)
・全部聞こうとして、経営者を「尋問モード」にしてしまう
・聞いた内容を先輩・上司に共有しない(ヒアリングは事務所の資産)
・「わかりました」だけで終わり、フォローをしない(次の面談で必ず一つは持ち帰った提案を返す)

✅ 面談後にやること:新人のための5ステップ

  • 面談当日中にヒアリングメモをデジタルで整理する(記憶は24時間で急速に薄れる)
  • 「気になった点」「確認が必要な点」を先輩・担当マネージャーに共有し、フィードバックをもらう
  • 聞き出した課題に対して、1つだけ具体的な提案を準備して次回持参する
  • クライアントカードや管理シートに情報を登録し、次の担当者が引き継げる形にする
  • 1週間以内に「本日はありがとうございました」の一言メールを送る(これだけで印象が大きく変わる)
💡 プロのひとこと:初回面談の評価は「何を話したか」より「経営者がどれだけ話してくれたか」で決まります。あなたが70%聞いて30%話す面談が理想。質問は「扉を開けるカギ」にすぎません。
🏁 この記事のまとめ

経営者との初回面談は、「税理士としての実力」より「聞く力」が問われる場です。

この20の質問は、事業・お金・人・リスク・未来・期待という6つのゾーンをカバーしています。全部聞く必要はありません。経営者の話の流れに乗りながら、「この人は自分のことをちゃんと理解しようとしている」と感じてもらうことが最大のゴールです。

新人のうちに「聞く習慣」を身につけた人は、5年後・10年後に圧倒的な差として現れます。ぜひこのリストを手元に置いて、明日からの面談で使ってみてください。

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